映画『100日間生きたワニ』感想

概要

タイトル:100日間生きたワニ

時間:63分

公開日:2021年07月09日

 桜が満開の3月、みんなで約束したお花見の場に、ワニの姿はない。 親友のネズミが心配してバイクで迎えに行く途中、満開の桜を撮影した写真を仲間たちに送るが、それを受け取ったワニのスマホは、画面が割れた状態で道に転がっていた。(中略)
 お花見から100日後――
 桜の木には緑が茂り、あの時舞い落ちていた花びらは雨に変わっていた。 仲間たちはそれぞれワニとの思い出と向き合えず、お互いに連絡を取ることも減っていた。
そんな中、みんなの暮らす街に新たな出会いが訪れる。引っ越ししてきたばかりで積極的なカエルに、ネズミたちは戸惑いを隠せず…

公式サイトより

 公開当時あまりに酷く売れなさすぎて話題になっていた一作。私は原作を追っていた人間ではなくニュースで取り上げられてたのを見てたくらい、最低限の知識はある程度。

感想

 ドラマチックな展開や見所の無い日常作品だから仕方ないけどまあ退屈でした。前半はワニの日常を見てるだけで何一つ面白味はありません。原作と比較して語るのはあまり好きではないが、原作では死へのカウントダウンと必ず明日が来ると思っているワニの対比がかけがえのない日々を大切にしようというテーマに繋がっています。だからこそ『100日後に死ぬワニ』であり、ワニのなんてことない日常とリンクしてグッとくるんです。

 一方、この映画ではカウントダウンどころか日付表示すら殆どなく、本当に何の変哲も無い日常と季節の移り変わり、ワニの死をを見せられただけ。これが後半へのアクセントになっているのであればいいのですが、ワニの描写、ネズミから見たワニの姿の両方が中途半端で原作の強みや良さを殺しただけにしか見えなかった。ただ、多くの人が作品の構造やラストを知っている上、この映画は誰の目線で描かれているのかを考慮すると仕方ないのかも。

 では、この映画のテーマは何かと言えば後半登場するウザいカエルを通して”ワニが居ない自分たちの日常を生きよう”です。つまりこの映画の主人公はワニではなくネズミを含めた周囲の人々。

 残された者が再び前を向く。ありふれたこのストーリー自体が悪いわけではなく描写不足の問題。ウザい印象のまま実は~からカエルを受け入れるまでが早く、彼らの感情と我々のギャップが激しい。もちろん意図は汲めますが予定調和、舞台装置にしかなってない。仮に後半の内容を主題として描くのであれば、面白くないワニの日常パートをバッサリカットし描きたかった後半部分に注力して丁寧に描いた方が良かったんじゃないかと。二兎を追い中途半端になってしまった。それが本作。

 

・その他のあれこれ

 絵本のようなアニメーションは雰囲気が出ていて良かった。視線でなんとか感情を伝えようとしている努力は伺えますが、それにも限界があり予算の都合を感じざるを得ないクオリティ。

 全体的にセリフの間、テンポが気になる。恐らく細かい仕草で間を見せる実写の感覚をそのまま不向きなアニメに変換してしまったのが原因。

 タイトルの”100日間生きた”は最後まで見ても意味が分かりません。過去形なのでネズミから見た日数なのかと思いきやどの要素にも引っかからない、単に100という数字が残っただけのように感じる。

おわり

 特に目立った何かがあるわけでもない凡作。