『プラオレ! ~PRIDE OF ORANGE~』感想

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概要

タイトル:プラオレ! ~PRIDE OF ORANGE~

原作:オリジナル(メディアミックス作品)

話数:12

放送時期:2021年秋-冬

スポーツ物として

 新たなスポーツを始める上で”なぜそのスポーツなのか?”が最後までいまいち見えてこなかった。本作はアイスホッケーを題材にしているが、途中で転校してしまう真美は「個人でコツコツ作る刺繍に通ずる他者とパスを紡ぐ楽しさ」を見出していてこのスポーツの面白さであり魅力を実感したからまた体験してみたいと次へ繋げている。

 一方、他の3人はこのメンバーでやれることの方が重要で、好きだから続けたいとかスポーツに対する想いがあまりない。楽しかった面白かったからなし崩し的に最後まで行った感が強い。真美はこのあと強豪チームでプレイする厳しさや友達の居ないチームでの居心地の悪さなど魅力を感じたからこそ痛感する壁に直面している。メインメンバーより余程スポーツをしてる。

 スポーツ物として見ると努力、挫折、苦悩の部分が殆ど描かれていないため苦労せず気付いたら決勝まで来ちゃったようにしか見えない。全世界の真摯にスポーツに取り組んでる人達に失礼なんじゃないかと思うくらいには描写が甘い、ヌルい。美少女ゆるスポーツ物なので悪い訳ではないが描写と結果の乖離が激しい。

 メインメンバーに注力する為にチームに属している先輩達が空気と化しているのは残念。居ないなら居ないでやりようはあるのに中途半端に出てくるから余計気になる。1クール12話じゃ厳しいけど経験者を描くことにより初心者との違いや現在のレベル、関係性などスポーツの見え方は全く違ったものになっただろう。目まぐるしく交代するアイスホッケーとならば尚更。本作がスポーツ物なのにスポーツをしてるように見えないのはこの部分が大きいかもしれない。

 試合後なぜか歌って踊るライブシーンがある。勝とうが負けようがライブはするからその時間アイスホッケーに費やせよと言いたくなるウマ娘並みの謎設定。しかしこれが案外よく出来ていてなんなら曲もいい。そこらの安っぽいアイドル物より良いから困ったもんだ。特に6話の「period」は照明衣装そして氷上がマッチしていて美しくカッコいい。

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 序盤の覇気を感じない畑弄りをしてるおじさんのようなアイスホッケー描写は回を追う毎に良くなっていって、最終話の動きは予想以上にスピード感や迫力がありとても見応えがあった。これは素人の勝手な考えだがアイスホッケーの場合掻き分けるのが面倒な顔と体が全員同じで簡素だから負担がかかりにくいのではないかと。ただ同時にフルフェイスマスクをしているから誰がどこでどう動いているのか分かりにくい。美少女コンテンツとは思えない絵面。

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キャラ描写

 悪くなけりゃ良くもない平凡。一応各キャラの心情部分は描かれていて、単話ないし複数話に渡って語られるけどメインキャラに集中した割に浅い。エピソードがその場限りで連続的な繋がりを感じない。

 最初に描かれる推し妹ちゃんの年齢差による体力的な部分は入団試験以降触れられない。比較的長めに語られた梨子尚美は互いの存在を描いただけで、梨子が負傷して出場してない分マークが緩くなって活躍するとか要素の幅が狭く限定的にしか使われない。個々のエピソードが解決したらそれで終わっちゃう。優は過程をすっ飛ばしすぎて理解出来ない。薫子に至っては大声が出せてないからで1話潰すのは贅沢すぎる。

 そして一番無味なのは愛佳。この物語の原動力となっているにも関わらず、これといったエピソードは一つも無い。プレイヤーとして凄いとかそういうのも無い(ゴールは決めまくってるけど)。ただ主人公ポジなだけ。

おわり

 スポーツ×ご当地キャラ物×アイドル。その全てを混ぜた結果なんだかまとまりのない作品になってしまった。アイスホッケーもアイドルも頑張ってるから焦点定めて振り切ってれば…と期待してしまうが、根底のキャラ描写を頑張らないと厳しい。